老子 補遺
「先を急ぐ」と言いつつ、老子の思想についてダラダラとここまで書いてきました。ひと区切りつけるために、いささか細かいことを書き残しておきます。このあとも、老荘思想、道家、道教、それから儒家についても勉強しつつ書いていくかもしれません(余談ですが、例えば支那哲学者の胡適による老子「小国寡民」論の再解釈は面白いと思う)。
もっとも、これまで書いてきたことは主として彼の政治思想についてフォーカスした内容になっていて、算命学の視点から必要と思われる「道」等については、前出の小島祐馬の言及以上のものは手元にないですし、もとよりその思想を否定するわけでもありません(そんな力量があるはずもなく)。ここに書いていることは、算命学の先生から「老荘思想と算命学とは近しい関係」云々という講義から、わたしが自分で調べたことに過ぎません。
- 司馬遷『史記』には、老子列伝があり、その中で孔子は老子に会い、彼に対して非常な敬意を示し、彼を評して曰く「それなお竜のごときか」と言ったとある。しかし、司馬遷の時代は、道家の思想が支配的であった文帝景帝の時代を受けて、老子は孔子より偉大な人物であるという伝説が流布した時代であり、司馬遷はそれを無批判に取り入れたと思われる。
- 老子の書と言われる『道徳経』は、老子の中にあらわれる思想に鑑みてだいぶ後世のものがはいっている。
- 小島祐馬曰く、「老子の政治思想は、儒家や墨家と同じく、国家を認め、君主を認め、また政治を認めるが、ただその政治の目標ならびのその方法が、儒家や墨家のそれと異なるのみである」
参考文献
- 上住節子『算命占法 上 思想原理』(東洋書院)
- 上住節子『算命占法 下 占技秘解』(東洋書院)
- 小島祐馬『中国思想史』(KKベストセラーズ)
- 大場一央『武器としての「中国思想」』(東洋経済新報社)
- 平勢隆郎『中国の歴史2 都市国家から中華へ 殷周 春秋戦国』(講談社学術文庫)
- 小島毅『中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流 宋朝』(講談社学術文庫)
- 神塚淑子『道教思想10講』(岩波新書)
- 菊地章太『儒教・仏教・道教』(講談社学術文庫)
- 中島隆博『中国哲学史 諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで』(中公新書)