荘子は徹底して個人主義的で、支配者という者を予想していない、と小島祐馬は言います。「予想していない」というのは面白い言い回しですが、要するに「想定していない」ということなんでしょう。あるいは、眼中にないと言ったらいいのか。老子の思想は政治思想的ですが、荘子のそれは個人主義的かつ無政府主義的だとも言います。荘子はそのことを、堯が天下を譲ろうとしてそれを拒絶した許由という人物を引き合いに出して、許由こそが荘子の最理想形だというのです。 彼は現在の社会が如何なる組織を有し、そこに如何なる道徳が行われていても、そ ...